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次回作に向けて

 映画評論の次回作は溝口健二監督の『近松物語』です。この作品の原作は井原西鶴『好色五人女』や近松門左衛門『大経師昔暦』を下敷きにし、名脚本家の依田義賢が練達の筆で描き上げた作品です。

 ストーリーの柱は、京都の大店の若女将香川京子と手代の長谷川一夫の道行、つまり心中を決意するまでの過程を、不条理劇として溝口健二が粘り強く描いた傑作です。

 優れた脚本、的を射た俳優の演技、名手宮川一夫の卓抜なモノクロームの撮影設計、巨匠溝口健二の演出などなど、見どころ満載の映画になっています。

 脚本や映画を見直しているうちにカミュの不条理について残した言葉を思い出しました。

「不条理という言葉があてはまるのは、この世界が理性では割り切れず、しかも人間の奥底には明晰を求める死に物狂いの願望が激しく鳴り響いていて、この両者が、ともに対峙したままの状態なのである。」

 評論文としてその点を意識して取り組んでいきたいと思います。

(石渡)

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